オリンピックを運営する上でスポンサーの存在は非常に大きい、それは資金面でのインパクトに限らず、視聴者にその存在感をアピールする手段としても非常に大きな影響力を持ちます。

国際オリンピック委員会 (IOC) がマクドナルドのスポンサー支援を失ったのは、2020年に東京五輪を控える日本でも大きく取り上げられました。そして、マクドナルドに代わってスポンサーに名乗りを上げたのが中国のeコマース大手、アリババです。私たちの日常生活において耳にすることは少ないですが、いまや「中国のアマゾン」とも言われ、中国が誇る巨大企業として成長を続けています。このアリババが、2017年1月にはオリンピックの最高位のスポンサー契約(ワールドワイドパートナー)を結びました。

そんな訳で、アリババがオリンピックのスポンサーを務めることが、どういった意味を持つのか、多くの人にとって疑問に思われていました。このブログでは、アリババが巨額を投じてオリンピックスポンサーをやる意義、その意図について深めていきます。

オリンピックのワールドワイドパートナーといえば、かの有名なコカ・コーラやオメガ、日本企業ではパナソニックやトヨタなどの超大手企業が名を連ねるオリンピック最高位のスポンサー。

2018年平昌オリンピックは、アリババがオリンピックパートナーとして初めて迎えた大会でしたが、開会式からその頭角を現しています。アリババのグローバル・キャンペーンを通して私たちはアリババが伝えたかったメッセージを感じ取ることになります。

アリババのメッセージはつまりこういうことです。

“TO THE GREATNESS OF SMALL”「小さきものの偉大さを信じて」

アリババのような大企業が「小さきもの」をここまで派手にキャンペーンするとは、なんとも興味深い方向性です。
しかし、アリババのビジネスを考慮すると、ある意味では納得のいくものになります。というのも、中国のオンラインeコマースの一流巨大企業として、アリババの主要なビジネスは1000万以上の中小企業と5億人の顧客の間を取り持つことだからです。

スポンサーをすることの意義について、アリババの最高マーケティング責任者であるクリス・タン氏はこのように語っています。
「我々は20億の顧客と数千万のブローカー、中小企業にアプローチをしたい、そしてオリンピックのパートナーシップはそのゴールを到達するために長期的に役立つのだ。」

「弱者が不可能だと思われる壁を乗り越える」という、オリンピックには定番の感動的な切り口を使って、アリババは3つのビデオを中心に宣伝活動を活発化。これらの動画は、YouTubeの広告掲載を筆頭に、世界中で多くの人に見られています。このオンライン主流の戦略は、オリンピックでの「デジタルな」経験を推し進めるアリババの全体像の一つではないでしょうか。
一つ一つのビデオを見ていくと、最近のオリンピックはもちろん、100年も前のオリンピックまで遡ってヒントを得た作品であると理解できます。
3つのビデオはそれぞれ「小さきものの力」に共通した作品となっています。
実際に3つあるビデオの1つでは、具体的な数字を出して「小さきもの」」にフォーカス。

「99%の人は自分が平凡だと思っている」
「97%の企業は中小企業」
「92%の国は小さな国」
「95%のスポーツ選手は注目されない」

それに続いて、男性のナレーターがメッセージ性の強いオリンピックの描写を背景に、語りを進めていきます。

「そのように計られる小さなものを無視することはできない。私たちは小さきものに対して、人とは違った見方をしている。私たちは信じる。小さな人にも比類ない力があることを。小さな行動が、何百万もの人々を感動させる。小さな一歩が新記録をつくる。小さな変化が未来を変える。小さな片隅が、全世界に影響を与える。小さな国の出来事が、全世界の人々の心を奮い立たせる。小さきものが大きなものに、ひとりひとりが世界をより良くしていく。アリババは小さき者の力を信じる。ワールドワイド・オリンピック・パートナーとしての誇りを込めて。すべての人々に平等なチャンスがあるこの舞台に、私たちはともに参加している。ひとりから数十億人へ。私たちは小さきものの力をみる。小さきものの偉大さを信じて。アリババは世界中の中小企業と若者を応援します。(訳:アリババ)」

2つ目のビデオは、ケニヤの大志を抱く一人の少年が、アイスホッケーのナショナル・チームを作ろうとするストーリー仕立て。

「ケニヤのアイスホッケーチームが大きな夢を抱く」

ケニヤに雪は降らないため、一見不可能に見える壁を、スポーツ、野心、国家のプライドをかけて乗り越えていくというオリンピックにはよくある物語に、このビデオが綺麗になぞられています。

3つ目のビデオでは、アリババがスポンサー権を利用して、1928年の夏季アムステルダムオリンピックの実話から着想を得ています。

「小さな行動は偉大な成果になる」

オリンピックのスポンサーは過去のオリンピック・パラリンピック、または選手も同様、それらのメディアの材料を使う権利を有しています。もちろん、1999年設立、弱冠19歳のアリババという巨大企業は、1928年のオリンピックでは企業自体存在もしていませんでしたが、過去の大会を遡ってうまく題材にしています。

次に作られるビデオは、ゼウスとヘラクレスをテーマにしたビデオになるに間違いありません!冗談はさておき、アリババのオリンピックへの投資をアピールするためのデジタル戦略は、とても興味深いものと言えるでしょう。

オリンピックの歴史、価値観、そして精神を、デジタルを活用した効率的な戦略コミュニケーションとして活用した、とてもよく考えられた良い例ではないでしょうか。

このシリーズの次回の記事では、日本のオリンピックスポンサー企業の事例研究を特集します。