コロナウイルス時代のソーシャルメディアPR:7つのポイントと実例

昨年12月に中国、武漢で最初の罹患者が出てから6ヵ月。4月に7都道府県に向け、出された緊急事態宣言は全国に広がり、5月4日にさらに延長され、最終的にいつ終息するかは予断を許しません。

多くの企業のビジネスが営業自粛を強いられるなか、組織や企業がステークホルダーに向け、オンラインでコミュニケーションをとることはとても大切です。テレワークやオンライン飲み会の実施など、インターネットやオンラインは多くの日本国民にとって、以前に増して身近になりました。

対面での接触ができない今、オンラインは組織や企業がステークホルダーにリーチできる唯一の場とも言えるでしょう。しかし、その方法やメッセージを間違えてしまうと企業の評判を大きく損ねることになりかねません。

組織や企業のコミュニケーションでは、受け手は取引先や顧客、一般市民など多岐にわたりますが、今回の記事では、コロナ禍のなかでも可能なSNSでのPR活動として、実例を交え企業が参考にできるベストプラクティスを紹介していきます。
 

Do’s ベストプラクティス編

 

1. 危機時だからこそ、企業が行うべき社会貢献活動

普段からCSR活動に力を入れている企業は多いでしょう。しかし社会貢献活動や寄付活動をCSRレポートに載せたりプレスリリースで出したりしても、ステークホルダーや一般市民からの反響はそれほど大きくない可能性があります。危機時にこそ、寄付などの社会貢献活動への注目度が高くなり、正当な評価を受けることができます。例えば、新型コロナウイルスによる自粛要請の影響を受けた音楽業界を支援する、救済基金に寄付したYoshiki氏の活動です。

Yoshiki氏
普段から自身が運営する米国非営利公益法人「YOSHIKI FOUNDATION AMERICA」を通じ多数の寄付を行ってきたYoshiki氏ですが、新型コロナウイルス「COVID-19救済基金」にも10万ドルの寄付を行い、これをツイッターでも公表しました。これに賛同する形で歌手、浜崎あゆみ氏も同様の寄付を行うなど、寄付の輪を広げることに貢献した点でも評価されています。

2. 自分たちの専門分野を活かし、日常生活を送れない人たちに寄り添った行動をする

自分たちの専門分野ではないことに手を出したりすると、シェアした情報が正確でなかったり、コンテンツの充実度が足りなかったりと、受け手から思うようなレスポンスを得られない可能性があります。多くの企業や著名人が、自分たちの得意分野で自粛中の一般市民を元気づけようとしていますが、なかでも話題になった方は、安倍首相のコラボレーションでも話題となった星野源さんでしょうか。

星野源氏
自分の専門分野を活かして、自粛中のファンの気持ちを盛り上げることができるコンテンツを制作。多数の一般市民だけでなく、著名人もコラボレーションしSNSで動画を共有しました。外出自粛中で自宅にいる時間が長い一般市民が共有しやすい形で、コンテンツを提供したことも、バイラルになる一因となりました。

3. 危機時だからこそ、リーダーがステークホルダーに向け直接コミュニケーションする

治療法は勿論のこと、行政の政策面でも未知の点が多い新型コロナウイルス。政策は都道府県ごとに異なるなど、情報が錯綜しやすい状況です。インターネットで気軽な情報発信が可能である現代において、デマはあっという間に共有されてしまいます。そのような状況のなか、リーダーが自らイニシアチブを採り、関連情報をステークホルダーに向けて発信することが意味を持つ場合があります。ステークホルダーに影響が出そうな危機が起こった場合には、トップが迅速にリーダーシップを見せることでステークホルダーの不安を取り除く必要があります。以下でいくつかの例をご紹介します。

吉村洋文大阪府知事
Twitterで大阪府に関する情報をさかんに発信。 #askthegovなどのハッシュタグを用いて、ライブ配信も行っています。自粛に応じない店名を公表するなど、意見が割れる対応についても、テレビインタビューのみならずツイッターでも説明し、誠実さをアピールしました。

アンドリュー・クオモニューヨーク州知事
自身の政策に関し頻繁かつ簡潔に頻繁にTwitterでアップデートを行っています。コロナの影響で業績不振に陥った州内の牛乳産業と提携したことなど、州民に寄り添う姿勢を伝えています。

さて、ここまでは参考にできる例としていくつかの著名人を紹介いたしましたが、企業や立場のある人がSNSで発信するときには気を付けなければいけない点が多々あります。以下では、いわゆる「炎上」をしてしまった著名人の投稿を参考に、気を付けるべき点を解説致します。
 

Don’ts 炎上編

 

4. 直感的に話さず、常に自分の立場をよく考えたうえで発言する。

ツイッターなどのSNSはその気楽さ故、自分の個人的な意見やちょっとした思い付きをすぐ世間に発信することができますが、自分の立場を考えて話すべきこと、話すべきでないことを意識してコミュニケーションをすることが必要です。発信すべきところ以外では発信を控えることも大切です。ちょっとした油断から「炎上」してしまった例をいくつか取り上げます。

イーロン・マスク氏
新型コロナウイルスがアジアだけでなく欧州や米国に広がり、トイレットペーパーや日用品の買い占め騒動が起こるなか、「The coronavirus panic is dumb.(コロナパニックはバカだ)」 とツイートし、国際的な注目を浴びることになりました。マスク氏のこちらのツイートにはおよそ170万の「いいね」が付くなど社会からの注目度は高いですが、自身の立場を考えた場合、企業や著名人がこれほど賛否両論を招く発言は気軽にするべきではないと言えるでしょう。

本田圭佑氏
「政府も全員を救うことは出来ない。優先順位の高いもんを政府が助けて、低いもんを国民同士で助けられるかどうか。」とツイートし、炎上。「優先順位」という言葉が本人の意図とは違う方向で読み手に受け止められたことが批判に繋がりました。誤解を招く言葉の選び方には慎重になる必要があります。

安倍首相
外出自粛中でストレスを溜める若者に寄り添うよう、星野源氏とのコラボレーション動画を投稿。自宅でくつろぐ様子を配信し、「炎上」する結果となりました。国のトップである首相が、国の危機のなかでリラックスしている姿を見たい国民はどれほどいるでしょうか。首相に休んでほしくないと望む国民は少ないと思いますが、ほとんどの国民はリーダーには、休んでいる姿よりも一生懸命危機に対処している姿を見たいと望んでいるでしょう。

5. 批判の声は受け止めつつ反論もしない

反対意見や反論に対して反応することはあまりいい方法ではないといえます。行き過ぎてしまったときに、アカウントを止めたり消したりしてもいけません。そのように反応することで、反対意見に対し反論できないと示すことになるからです。反対意見や批判に対しては黙って受け止めつつ、受け流すことが一番無難な方法だといえるでしょう。

愛知県・大村秀章知事
ローカルテレビ局の番組に出演中の発言「インフルエンザもそうだが、『うつっていく、うつって治る』のが感染症なので、しっかりと検査で早く見つけて症状が軽いうちに治して退院してほしい」がSNSツイッターで取り上げられ炎上。反対意見の持ち主を次々とブロックしてTwitter上で話題になりました。

6.「自分たちだからこそできること」を外に向けて発信はしない

コロナウイルスで行動が制限されている人々が多いなか、特権行為を見せるようなものは批判の対象になりやすいでしょう。

馳浩衆議院議員
今は一般企業の多くがテレワークを行うなか、一般社団法人の視察を複数人で行いFacebookにて発信。視察時の態度などについて、視察先からTwitter上で批判され話題に。野党からも批判を受けることになりました。

朝日新聞「台湾隔離日記」
朝日新聞の特派員がバンコクから、新型コロナウイルス対策による隔離政策下の台湾にあえて入国し、宿泊先で隔離される様子を連載記事に。不謹慎だと批判を受け、連載は中止となりました。

7. デマを流さない

企業や著名人がSNSで発信したものは影響力も大きく、基本的には事実であると受け取られます。投稿する内容に嘘やデマがないことはSNS運営における大前提です。

ジェジュン(歌手)
コロナに感染した、と自身のインスタグラムに投稿。ニュースでも取り上げられました。結果的に数時間後には本人がエイプリルフールの冗談のつもりで投稿したものだと判明。多数の死者が出ている新型コロナウイルスの感染状況のなか、日韓両国で大きな批判を受けることになりました。
 
 
企業や著名人のコミュニケーションの場としてすっかり定着したSNS。

不特定多数の目に触れるSNSだからこそ、企業としての立場を意識し 、気を付けるべき点は多いと言えるでしょう。

外出自粛のために人々がSNSを利用する時間が増えるなか、SNSでのコミュニケーションをうまく取り入れることで、効果的なPR活動が展開できるでしょう。