エピソード8:震災で注目を集めるも定着しない人々
人口:1億2800万人(2011年時点)
日本の地方は、3月11日の東日本大震災が起きるまでほとんど忘れ去られていた。震災により、すでに縮小していた地域社会がいかに悲劇に見舞われたかについて人々の注目を集めた。東北地方太平洋側の多くの都市に壊滅的な被害をもたらした地震や津波、原子力発電所の事故は、ある意味では、日本の地方が危機的状況にあったことを示す警鐘であったといえるだろう。
公式の統計(2021年時点)では、死者19,759人、負傷者6,242人、行方不明者2,553人と発表されている。2015年の報告書によると、228,863人が仮設住宅、もしくは恒久住宅への転居などで自宅から離れて生活しているという。
国内外からはボランティアが集まり、家やコミュニティ、生活を突然失った人々を助けるために勇敢に行動した。
私は無力感を覚えた。東京にいても本震や度重なる余震は恐ろしかった。繰り返される死者数や被害の報道、そして次に巨大地震の震源地になったらどうしようという消えることのない不安は、日本全体の雰囲気を一変させた。日本中でいつまでも消えることのない噂が飛び交い続け、パニック買いが生じた。さらには、大地震とそれに続く原発事故に怯えた外国人が大量に国外へと脱出した。多くのクラスメートが一時的あるいは永続的に帰国するなか、私は壊れたアパートを片付けつつ、すぐに日本に留まることを決めた。
世界銀行により経済的損失が2350億米ドルにまで達すると推定された、この未曾有の大災害による被害者の救済と破壊された都市全体の再建のために、政府と日本の大手企業は大規模な支援活動を行なった。援助や金銭的な支援は殺到したものの、それは短期間かつ災害支援に焦点を当てたものであり、地方の人口減少という長引く問題には上手く対応できていなかった。
地方からの人口流出が正式に解決すべき問題として認識されたのは、故・安倍晋三首相が「地方創生」という言葉を生み出し、その対策にしっかりと取り組んだ2014年になってからだ。
その結果、日本の地方に人を呼び戻すための様々なプログラムや取り組みが生まれた。しかし、こうした努力も虚しく、地方からの人口流出の傾向は現在も続いている。