エピソード7:失われた10年と都市への移住

人口:1億2400万人(1989年時点)

1989年の株価暴落は、日本の急激な成長の終わりを告げ、不動産市場は最も大きな打撃を受けた。この経済危機により、不動産の価値は半分以下へと下落した。経済の先行きへの不安感が高まるなか、若者はより良い経済的機会を求めて実家を離れ、東京をはじめとする大都市に移住するようになった。同時に、都心部の賃貸・売買物件は急激に安くなった。

1950年から2010年にかけて、三大都市圏の人口は2900万人から6400万人(2.2倍)へ増加した一方、その他全ての地域は合計しても5400万人から6200万人(1.1倍)へしか増えていない。つまり、大都市圏では人口が急増した一方で、それ以外の地域の人口はわずかに増加したばかりであった。

1955年地方には42%が住み、都市には58%が住んでいた。2010年にはわずか9%が地方に住み、91%は都市に住むようになった。

2005年に初めて日本を訪れたとき、この傾向はすでに固まっていた。1955年に47,000人のピークを迎え、2005年には31,000人にまで減少した岩手県遠野市で1ヶ月間交換留学をした際に交流した意欲的な高校生たちは、明らかに大都市での生活に夢を抱いていた。全国の大学生がそうであるように、彼らの頭の中には地元に留まるという考えが乏しかったのだろう。

日本の地方都市では、民間企業の活躍の場がなくなり、最大の雇用主が自治体であることが急速に広まった。かつて、地元の商店、レストラン、ナイトライフで賑わった商店街は、シャッターが閉まり、ほとんど人のいない通りに変わってしまった。1997年のアジア金融危機、2007-2008年の世界金融危機と、日本全体が不景気であったため、このような現象が明らかに起きていたにもかかわらず、日本ではこのような現象は見過ごされてきたのだ。

日本経済は2008年の市場の大暴落から健全な回復を遂げたが、それは束の間のことでありもっと悲惨な事態に見舞われることになった。