最新の政治動向 2024年8月

6月23日、第213回通常国会が閉会した。しかしながら、岸田首相は安心して休める状況ではない。不十分ではないかと評価される「政治資金規正法」の改正とその手続きや防衛省騒動、都議補選の敗北など岸田内閣に対する不信が広がっている。7月8日に発表されたNHKの世論調査によると、岸田内閣を「支持する」と答えたのは25%だったのに対し、「支持しない」と答えたのは57%だった。

今夏の政治の動きが岸田政権に今後どういう影響を与えるのか、今政権が直面する様々な課題を見てみよう。

防衛省の不祥事、防衛費「倍増」計画が円安で難航

防衛省では、官僚や自衛官らによる国家機密の不正使用やパワハラなど全220件の不祥事が明らかになり、対応に追われている。結果、防衛省の上層部は辞任や減給といった処分を余儀なくされている。

岸田首相は訪問先のワシントンでの記者会見で不祥事について謝罪したが、この不祥事は防衛費の増額や日本の機密情報の扱いに対する評判に悪影響を及ぼすことが想定される。

さらに、現在予想以上に円安が進んでいることから、防衛費計画の見直しの検討が求められると考えられる。

防衛費の増額を押し進めたいと考える岸田政権にとって、防衛省の不祥事と円安の加速が正に逆風となっている。税金で賄われる防衛費は、政府に対する国民の信頼を獲得することが重要であるため、これからどのように信頼を回復していくのかを政府は検討していく必要があるだろう。

都議補選の結果が持つ意味

小池百合子氏の三回目の東京都知事選当選は、幅広い有権者から「無難な選択」であるとして支持を集めたものと推測され、安定した支持を広く獲得している結果と考えられる。

一方、岸田政権の是非と都知事選は元より別の問題であると捉えられていたことが明らかになった。都議補選では自民党候補者8名中2名しか議席を獲得することができなかったため、自民党の不振が指摘されている。

議席を十分に確保することができなかった背景として、国会で議論された自民党派閥の裏金問題が影響していると考えられるだろう。高まってしまった党への不信感を払拭しきれていないことは明白であると言えるため、今後、はっきりとした何らかの改善がなされない限り、自民党へのさらなる悪影響が発生すると考えられる。

次々と増える自民党総裁選の対抗馬

自民党は3年に1度、あるいは現職の首相が辞任した際、自民党総裁を選ぶ選挙を行う。自民党は国会において最大の議席を保有する与党なので、自民党総裁が政府の首相になる。次の選挙はまもなく9月末に行われる予定だ。

石破茂元幹事長が出馬の意向を固めた。自民党国会議員からの支持は限定的であるため、票の確保に苦労した過去がある一方、世論調査では高い評価を得ている。2012年の自民党総裁選では、全国の自民党員の票が大きく反映される最初の投票でリードしていたものの、議員票による決選投票で安倍晋三氏に敗れた。

河野太郎デジタル変革担当相も出馬の意向を示している。国家公安委員長や外相、防衛相などを歴任し、新型コロナのワクチン接種も担当した。前回の総裁選では自身が所属する麻生派の支持をまとめることができず、決選投票で岸田首相に敗れた。麻生氏は今回も岸田首相の再選を支持すると見られている。

また、高市早苗経済安全保障担当大臣など前回の総裁選で出馬した自民党のベテラン議員も参戦する可能性が高まっている。

現在数々の政治問題への対応を問われ、支持率の低下が指摘されている岸田政権に対して、それぞれの候補者がどのような手段で政権の支持率を向上させていくのかが注目されている。一回目の投票で単独で過半数を獲得することは難しいと目され、過去の決戦投票の流れから、やはり自民党国会議員の支持をどのように獲得するかが鍵を握っていると考えられる。

さて、どうなる岸田政権

岸田首相の内閣支持率と自民党支持率は、裏金スキャンダルの影響で過去最低に落ち込んでいる。岸田派の元経理責任者も関与していたにもかかわらず、首相自身が処分されないことについての不満も広がっている。

国会では、改革の方向性の不透明さや官邸と自民党幹部の連携の希薄さなどから、岸田政権の機能不全が露呈したと指摘された。

さらに、定額減税の事務手続きの困難さや少子化対策への財源確保の不透明性など長期的な視点に欠けた政策運営をしていると指摘され、自民党政権にとって危機的な状況であると取り沙汰されている。

支持率が低下している現状でも、岸田首相が退陣を強く迫られないことは、有力な野党や他の自民党総裁候補が存在しないことが理由だと考えられている。

岸田首相は国会閉会中に外交努力などにより支持率を回復させる活動を積極的に進めるだろう。

しかしその活動が目に見える成果に繋がるのか、今後の動きを注視するしかない。