新型コロナウイルス(COVID-19)に関する危機管理・メディア対応:7つのポイント
デイビッド・ワグナー
(パルテノンジャパン株式会社上席顧問)
世界的規模のパンデミックが発生し、多くの企業がメディアとどう接するべきか、どうメディアの関心をひくべきかどうか、判断を迫られていると思います。その際には、どのようなメッセージを、どのようにメディアに向け発信するするかということを考えなければなりません。そこを考えると、一つの疑問が出てきます。スポークスパーソンがアピールしたい点は何か、というものです。安全性?クライアント重視?それとも事業の継続性ですか?
その答えは、キー・メッセージ作成の際に必要になります。キー・メッセージを、タイムリーかつ効果的な方法でメディアに発信することで、将来的な損害を未然に防ぐことになります。そうしなかった場合、メディアがメッセージの方向性を操作して企業に恒久的な被害をもたらすという悪夢がいつまでも続くことにも繋がります。今回のCOVID-19危機のなか、スポークスパーソンの企業がいかなる事業であっても、キー・メッセージは簡潔かつ、インパクトのあるものにしましょう。
メディアと関与する場合、考えなければいけないこと事柄は多岐にわたります。
- なぜそのメディアなのか
- 最終的な目的は何か
- どの媒体を使うのか:マスメディア(新聞雑誌、テレビ、ラジオ)なのか、ソーシャルメディアなのか
- 誰がスポークスパーソンになるのか
- 外に出すべき情報は何なのか
- 危機の発生前や発生中の期間や事後、それぞれ届けるべきメッセージは何なのか
- どう効果的にメッセージが届けるのか
- メディアから来ると予想される質問は何か
- どのようなタイトルで記事にしてほしいのか、またどうやってそれを実現させるのか
危機の発生中、時間はスポークスパーソンの味方をしてくれません。だからこそ、キー・メッセージを届けることができる適切なスポークスパーソンを決めておくなど、事前に正しく備えることをお奨めします。
危機管理担当スポークスパーソンは、多くの観点から重要事項について検討しなければいけません。例えば、オーディエンスは不安で、安心感を求めているのか。それとも楽観的で、注意喚起すべきなのか。はたまた怒っていて、落ち着かせる必要があるのか、などです。
適切なメディア対応ができるスポークスパーソンを準備するには、次の7つのポイントがあります。
1. 得た情報は速やかに発信
危機が発生すると時間はスポークスパーソンの味方をしてくれませんが、調査や研究には時間がかかります。 言えないことや知らないことはありますが、気付いた時点のことを言いましょう。黙り続けていると、全容を知らない外部からの推測を煽ることになります。
2. 何を誰が発信するかを決める
何を誰が発信するかは、会社の危機管理能力を色濃く示すものです。事実を外に伝えることは大事ですが、同様に大切なことはその文脈が正しく理解されるかどうかです。
事実は文脈のなかに位置付けて発信し、大局的な意味を見失わないようにする必要があります。特に、その危機によって被害を受けた人に向けては尚更重要です。主なステークホルダーに、何が起きているかをスポークスパーソンの視点から説明しましょう。
何が誰に対して発信されているか正確に把握できるよう、発信源が多くなりすぎないよう気を付けてください。
3. 真実を伝える
メッセージングは「スピン」ではありません。 主要なステークホルダーは、
4. 悪いことを認める
不正行為の責任を受け入れない場合でも、人々の怒りや欲求不満を認識することが重要です。 異議や苦情を最小限に抑えようとしないでください。ある種のフォーラムを開いて聴いてもらい、スポークスパーソンがそういった声に耳を傾けていることを知らせてください。
5. キーメッセージが正確に届けられているのか確認
メディアはかつてないほど多様で広範になりました。 つまり、企業が一つの中心的なコミュニケーションの手段を介してステイクホルダーにリーチすることはかつてないほど困難です。
危機のかなり前に、ターゲットオーディエンスに到達するいくつもの方法を定める必要があります。 つまり、それは、よく考え抜かれたメディアリスト、メディアや一般の人々が利用できる一時的でタイムリーな企業Webサイト、および予算が許せば広告とマーケティングの統合キャンペーンを準備することです。
6. 従業員に常に情報を提供
自社の社内サイトやニュースレター(存在する場合)は従業員の重要なリソースなので決して無視しないでください。 最善を尽くして、スポークスパーソンについて何が言われ、何が書かれているかをモニターして、スポークスパーソンがいつどのように応答するかを選択できるようにしてください。
7. 適切に対応
危機に対処するスポークスパーソンの能力に影響する、スポークスパーソンが制御できない要因が発生するでしょう。 提供できないソリューションを約束しないでください。 同時に、スポークスパーソンの反応が少なすぎるとも遅すぎるとも見られることがないように、提案する解決策を吟味してください。
いつ反応すべきか?
危機は時に組織外の人々によって見つけ出されることもありますが、常にそうではありません。スポークスパーソンのビジネスや評判が危険にさらされていると思うなら、その時が行動する時です。危機に関する問題が広く知られているか、従業員や顧客によって認められているかどうかに関わらず。 メディアがその情報をつかむのを待つのは、間違いなく良くない戦略です。 その時は、情報拡散プロセスのコントロールを簡単に失うことになるからです。
本質的に危機は混乱の中であり、多くの場合、慎重かつ考慮された対応を困難にするほどのペースで広がっていきます。 時には、それらは予期せぬ出来事から生じたものであり、振り返ってみるといくつかは予測できたものもあるかもしれませんが、常に、リーダーシップスキルと準備ができているか試されます。 コミュニケーションが重要です。
前述のように、危機はビジネスの健全性と評判の転換点を表し、多くの場合、潜在的に両方が損害を受けます。 しかし、うまく対処できれば、危機対応は実際に評判を高め、必要な対話と変化を促進することができます。
スペシャリストのご紹介
シニアアドバイザー メディアトレーニング&クライシスコミュニケーション担当
メディアトレーニング、クライシスコミュニケーションコンサルタントとして豊富な経験を持つ。駐日各国大使、フォーチュン500にランクされているグローバル企業の幹部、政府機関等からオファーを受け、日本、北米、アジア、ヨーロッパ、中東など国境を越え550ヶ所以上の組織と取引実績を持つ。
グローバルメディアトレーニングのコンサルタントとして知られるデイビッドは、MNC(多国籍企業)幹部向けメッセージの調整、日本企業及び日本政府向けグローバルPR戦略のエキスパートです。彼の専門知識は、グーグル、ゴールドマン・サックス、ウォルマート、ナスダック、日本の首相官邸、外務省などから求められてきました。
デイビッドの幅広いキャリアには、KreabとEdelmanの日本を代表するコミュニケーショントレーニングチームでの経験が含まれています。ビジネスコミュニケーションやメディア対応に関し24冊の本を執筆しており、NHKにおいてグローバルビジネススキルに関する全国番組2本の制作者であり、司会者でした。ミドルベリー国際大学院モントレー校で日本の政治経済学分野修士号を取得。
コロラド州デンバー出身のデイビッドは、2018年の米国選挙の間、民主党全国委員会のコミュニケーションアドバイザーを務めました。