日本におけるクライシスコミュニケーション:危機的状況を乗り切る6つのステップ
「ペースの速い、予測不可能な今日の世界では、危機を免れる組織はない。そう、あなたでさえも」
組織の評判を守り、社会的信用を維持するためには、騒動が起きることを想定し、効果的に危機管理をし、コミュニケーションを図る能力が不可欠である。クライシスコミュニケーションは世界的に確立された手法であるが、日本では対処方法に根本的に異なる点がある。このブログでは、クライシスコミュニケーションに関わる重要な手順を紹介し、危機的状況の予測、対応、回復に役立つことができればと思う。日本での実際の危機対応から得た実践的な見解も盛り込みながら、6つのステップを紹介する。
予期する!
危機対策に抜かりない準備を!
「何かが起こるかもしれない… と予期することができる」
組織を守るためには、まずは備えることが大切だ。スポークスパーソンを選定し、危機管理チームを立ち上げる。起こりうる問題を特定し、問題が起こる前に対処法を計画する。危機発生時にうまく話せるよう、スポークスマンを訓練する。また、意思決定と迅速な対応に必要なものをすべて備えた「危機管理対策室」を作る。これは、物理的なスペースを設置することでもよいし、法律家や(私たちのような)広報の専門家を含む信頼できる関係者のグループでもかまわない。
実践で学んだこと: 実際に何が襲ってくるかは予測できない。しかし、何かが起こるかもしれないということは予測できる。可能な限りの準備をするためには、このような問題解決の姿勢が必要である。
危機の襲来!
事実を知り、弁護士の意見に耳を傾ける
(ただし、彼らのアドバイスに盲目的に従わないこと)
「日本の危機的状況において、そこに弁護士がいるのいうのは罪があることを示唆している」
危機に直面した場合、正確性と透明性が鍵となる対応策を組み立てるために、関連する事実をすべて収集することが極めて重要である。法律相談は重要だが、法的な考察と利害関係者とのオープンなコミュニケーションの維持のバランスを取ることが不可欠だ。ただやみくもに法的助言に従うのではなく、それが自社の評判にどのような影響を与えるかを考えてほしい。
実践で学んだこと:弁護士は法的手続きには長けているが、記者会見には出てこないでほしい。日本ではどんな危機的状況でも、弁護士の存在は罪を意味する。弁護士チームをスポットライトから遠ざけることができれば、有罪だと思われずに済むのである。
分析する!
被害を測定し、行動計画を立てる
「リスクについて考え、(利害関係者など)誰が最も重要かを把握する」
危機にうまく対処するためには、事態の本当の深刻さを知らなければならない。状況を注意深く確かめ、徹底的に分析し、リスクについて考え、誰が最も重要なのか(利害関係者など)を把握する。そして、危機を迅速かつ効果的に解決するための明確なステップを備えた計画を立てる。
実践で学んだこと:シンプルに考える。危機を深く分析しようとすればするほど、それに対応できずに時間を浪費することになる。重要なことに集中し、それから行動を起こす。
対応する!
素早く動き、ひたすら頭を下げる
「過ちを隠そうとしない」
危機に際しては、早い段階で誠実に話すことが重要である。問題を認め、ひたすら頭を深く下げることだ。適切な場合には過ちを認め、教訓を学んだという安心感を与える。また、敵対勢力からの潜在的な攻撃を予測し、練りに練った対応策を準備しておくこと。敵対勢力は絶え間なく襲ってくるからである。
実践で学んだこと:過ちを隠そうとしてはいけない。敵はあなたが何かを隠していることを知れば、それを見つけるまで止めないだろう。そうなれば、あなたは悪者のように見える。日本の聴衆は、違法なことをして捕まった組織よりも、透明性を保ち謝罪する組織の方にずっと同情的である。
状況把握と封じ込め
状況を把握し、ダメージをコントロールし始める
「とにかく状況把握する。日本の報道は24時間」
危機に際しては、世論や状況の変化を常に把握することが極めて重要である。ソーシャルメディアリスニングツールや従来型のメディアモニタリングを活用し、世論を把握し、新たな問題を特定する。危機が悪化しないように、追加の記者会見やメディアとのやり取りを手配するなど、状況を管理するための迅速な行動を取る。最初の対策がうまくいかなかった場合は、さらなる努力を続けなければならない。
実践で学んだこと:とにかく状況把握をすること。日本のマスコミは24時間体制だ。マスコミはオフィスの外で待ち伏せし、元社員や敵対する人物にスポットライトを当て、さらには幹部の自宅で待ち伏せする。マスコミが何をしているかを知っていれば、効果的な対応ができる。さもなければ、言わば「まな板の鯉」となるだろう。
回復する!
評判を再構築する
「長期戦を戦い、未来に焦点を当て続ければ、 最終的に勝つことができる」
ダメージを受けた評判を回復するには、長期的な戦略が必要である。ダメージを受けた組織は、一貫して約束を守ることで、信頼と信用を回復することに集中すべきである。単に当面の危機に対処するだけでなく、二度とこのようなことが起こらないようにするための対策を実施し、また、その組織が責任ある企業市民であると世間に信じてもらえるような取り組みが必要である。
実践で学んだこと:危機的状況は楽しいものではなく、ストレスに押しつぶされそうになりがちだが、長期戦を戦い、未来に焦点を当て続ければ、最終的には勝利することができる。
これらの戦術を実行する必要がないことを祈るばかりだが、危機的状況に遭ってしまった組織も、これから備えたい組織も、パルテノンジャパンとともに「危機管理対策室」の準備をしよう。
著者について
パルテノンジャパン株式会社 代表取締役社長 パーカー・アレン
日本におけるグローバル企業の政府広報&PRを専門とするコンサルタントとしての豊富な経験を持つ。企業、政府、社会のコミュニケーションギャップを解消することを目的に、2018年にパルテノンジャパンを設立。