日本活性化(パート4):テクノロジーとヘルスケア

テクノロジーとヘルスケア

テクノロジーとヘルスケアの進展は、日本の地方にどのような良い影響を与えることができるのだろうか。

現在の予測では、2050年には日本の人口の4割が65歳以上になると言われている。若者が大都市での生活を好み続ければ、地方では生産年齢人口が減り、税収が減少し、必然的に地方でのサービスの低下にもつながる。このような状況を緩和するために、テクノロジーとヘルスケアのイノベーションはどのような役割を果たすことができるのであろうか。また、これらのイノベーションは、日本の地方にとって長期的な解決策となり得るのだろうか。

日本の地方創生を考えるシリーズの第4回目は、日本の地方の運命を左右するテクノロジーとヘルスケアの役割について考える。

テクノロジーと地方開発

過疎化の影響は明らかで、空き家や空きビル、インフラ設備の劣化、雇用機会の減少などが挙げられる。そのため、交通の効率化や医療の充実など、地方に住む人々により良いサービスを提供するための取り組みが行われている。それでも日本の地方に住みたいと思う若者が少ないことが、この状況を解決する難しさを示している。若者に魅力的な取り組みでこの流れを変えることが、持続可能な解決策の核となる。

では、新しい世代を呼び込むにはどうしたらいいのだろうか。

日本の田舎暮らしを考える上で、多くの若者を阻む大きな要因の一つである高速インターネット接続について考えてみる。岸田首相の「デジタル田園都市構想」では、2030年までに日本全国に5Gネットワークを整備し、日本全国でインターネット接続を標準化することを目指している。しかし、誰もがITに精通しているわけではなく、特に高齢者はそうではない。光ファイバー網を日本の全世帯の99%に提供するという岸田総理の取り組みはすでに進んでいる。しかし多くの若年層はインターネット接続と言えば携帯電話網への強いアクセスだと考えているという事実があり、政府の取り組みとは相反している。田舎での高速モバイル通信接続の完備はハードルが高い。

仮にそれが実現できたとして、地方での生活にどのような影響があるのだろうか。その答えの一つは、世界的な傾向であり日本の若者の多くがますます好むようになった「在宅勤務」への動きにあるのだが、日本の大企業の多くは対応に出遅れている。とはいえ、日本企業のいくつかは、従来とは異なる働き方を受け入れるようになっている。Paypay、Mercari、Moneytreeといったテクノロジー関連企業は、このトレンドを推進する先導者となっているのだ。

しかし、対面での会話を重要視する企業では、自宅とオフィスの両方で仕事時間を割り振る、あるいは100%在宅勤務を認めるなど、ハイブリッドな働き方を受け入れてもらうことが難しい状況が続いている。確かに、これはまだ実現途上のことかもしれない。しかし、若い世代が行動で示し、柔軟な働き方を認めない会社を辞めるようになれば、結果人手不足になる企業がそのメッセージを受け取るようになるのではないだろうか。

リモートワークの普遍的な受け入れには、時間がかかるだろう。100%リモートワークで日本で仕事をしたいと思う外国人労働者のための「デジタルノマドビザ」も同様だ。現在、このようなビザの種類は制定されておらず、導入に向けた真剣な議論も行われていないようである。

新たな最先端テクノロジー

ビッグデータ、人工知能、その他の新しいテクノロジーは、地方の暮らしを快適にすることができるのだろうか?技術革新がゲームチェンジャーとなりうる産業はいくつかある。食料生産はおそらく最も重要なセクターだ。2030年までに、日本の農業従事者の約60%が65歳以上になるため、日本の農業は最大で3分の1の労働力が失われると予想されている。

スマート農業は、大きなインパクトを与えるだろう。数十年前から始まった、機械による作物の植え付けや収穫はますます増えている。最近では、農作物のモニタリングや施肥を行うドローンへの関心が高まっている。「精密農業」と呼ばれる一連の農業技術により、肥料や農薬の散布は、手作業と比べてわずかな時間とコストで完了することができるようになった。

同様に、精密な道具を装備した農業用の自動運転車も開発中である。これにより、生産を拡大し、運搬手段を強化することができ、アクセスが限られた場所でも作業が可能となり、最終的には高い投資収益率を生み出すことができる。人力に代わる革新的な技術の普及と受容は徐々に進むだろうが、これらは前向きな進展である。

他の面でも変化が必要である。新しい技術開発を取り入れるには、規制の枠組みを更新する必要がある場合が多い。テクノロジーは規制適用よりも速く進歩する傾向がある。ドローンやその他の自動化技術の革新が進む中、こうした開発のペースに同期した法律の制定や改正が行われていない。人や資源の不足に悩む地方にとって、新たなテクノロジーは計り知れない可能性を秘めているだけに、これでは機会損失と言わざるを得ない。

地方のヘルスケア

もう一つの注目すべき問題はヘルスケアだ。過疎化、税収減、都会での窮状が重なるとどうなるのだろうか?

都会でも田舎でも、仕事にまつわるストレスは長期的に悪影響を及ぼす。通勤時間が長く、長時間労働に悩む都会人にとって、田舎暮らしは魅力的だ。しかし、田舎暮らしには、医療施設へのアクセスのしやすさ、医療スタッフ対患者の比率、ロボット技術を使用するための適切な訓練を受けた医療従事者の有無など、適切な医療を受けるための様々な懸念がある。

単純な日常的医療の必要性や専門領域、慢性疾患、救急医療だけでなく、精神的なサポートも考えなければならない。地方に充分な人員配置のある施設はあるのか?最新のテクノロジーを利用できないことが支援の選択肢の幅にどのような影響を与えるのか?

東京や大阪などの都市に比べ、地方の多くは、介護付き住宅や老人ホームなどの施設だけでなく、医師や看護師、介護士などの面でも不足している。これは税収減による資金不足だけでなく、優秀な医療従事者の確保が課題となっていることが原因だ。高い技術を持つ医療従事者は、都会での生活や高い給与の魅力を好むことが多く、まさにこれは地方全体が抱えている問題そのものである。

病状を改善するためにテクノロジーが極めて有効なケースがある。日本は、1960年代に始まった人工臓器の作成や、Instalimbのようなスタートアップが率いる義肢装具の3Dプリント技術など、医療機器の分野でリードしている。日本のテクノロジーは、エネルギー効率の高い冷暖房、音声コマンドによる生活支援ツール、節水家電などを提供するスマートハウジング、より効率的に商品を売買するEコマースプラットフォーム、クリーンエネルギーの革新など、いくつかの分野で有望視されている。

継続的な取り組み

「作れば来る」(映画「フィールド・オブ・ドリームス」での格言)。この一般的なことわざは、ある状況下では有効な場合もあるが、強力なインフラが中核にあってもそれはパズルの一部に過ぎない。好奇心旺盛な若者は、高齢者よりも新しい技術に関する知識が豊富な傾向にある。一方高齢者は新しいテクノロジーを取り扱うのが苦手である。彼らを助けるために何ができるだろうか?

新しい技術の使い方を教えることを目的とした国のプログラムは存在するが、それらはあまり多くはない。岸田首相のデジタル田園都市国家計画の一部では、携帯電話やコンピューター、その他の機器の使用方法を高齢者に教えるために、2万人の若者を募集することになっている。今のところ、これはまだ計画段階だ。高齢者向けの既存の取り組みは、現在のところ断片的であり、ほとんどが地方レベルで行われているに過ぎない。

より熱心に取り組むべき課題は数多くある。例えば、農村部の下水道である。現在、多くの田舎の住まいでは、廃棄物を浄化槽システムに頼っている。そのため、浄化槽の清掃が毎年必要になり、日常的な利用が難しくなることもあり、地方での生活コストがかさむ。水質浄化や漏水防止などの最新技術を取り入れた、国全体の支援による総合的な廃棄物・排水対策が必要である。そうすれば、田舎暮らしがより魅力的で、より安価なものになるはずである。

幸い、日本の定年退職者の多くは、個人投資や高い貯蓄率により、個人の老後資金を確保している。しかし、介護の担い手となる有能で意欲的な人材の確保が大きな課題だ。この人材不足により高齢者介護補助がそのエリアで欠落することになるので、自宅で働いていて高齢の親を介護する必要がある家族に多大な影響を及ぼす。高齢者介護の従事者は、ともすれば給与が低く、十分な訓練を受けていない場合がある。テクノロジーの必要性は明らかである。

また、一人暮らしの人が地域活動への参加やコミュニケーションを通じて、より主体的なメンバーとして活動できるようにする地域づくりも課題である。このような取り組みに着手し、継続していくには、専任の担当者が必要だ。そうでないと、資金的な問題はともかく、せっかくの企画がすぐに破綻してしまうのは目に見えている。

残された課題

現状は悲観的になりがちだが、良いことも起きている。日本の地方を活気づけることを目的とした国や地方のプロジェクトは、文字通り何百とある。本当に役に立つものもあれば、地方票を頼りに権力を維持しようとする政治家への支持集めを目的としているように見えるものもある。

これは日本に限ったことではないかもしれないが、地方のリーダーと国の意思決定者との間に固い絆がある結果、皮肉にも地方の住民の利益に充分応えられないことがある。必要なのは、再選を目指すためだけに時間を費やすのではなく、在任中に物事を成し遂げることに重きを置いたリーダーシップである。

この傾向が続く限り先行きは比較的暗い。しかし、新たな機会を提供する技術が導入されれば、好転する可能性がある。ただ、民間企業がもっと大きな役割を果たす必要があることは確かだろう。しかし結局は、多くの日本の技術関連の問題や健康問題を解決するために企業が貢献できることは限られている。地方創生という究極の目標を達成するために、インセンティブを追加し、これまで実施されてきたが今のところまだ成功していない官民連携をさらに拡大していくことが、有意義な変化を生み出す鍵になるだろう。